心源性脳塞栓症

  今年、3月4日、読売巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏が倒れました。病名は、発作性心房細動に基づく心源性脳塞栓症。左大脳に梗塞を起こし、右手および右足に麻痺が発生したそうです。
 長嶋氏は高血圧などの既往も無く、また定期的に受けていた健康診断では心房細動も認められなかったそうです。各種報道で原因として挙げられるストレスも心房細動の危険因子の一つですが、健康な人でも、加齢とともにそのリスクは高まるのです。
 3月末、長嶋氏は急性期病院での治療を終え、リハビリテーション病院へ転院しました。ただし今後も脳塞栓症の再発予防のため、ワーファリンの服用を続ける必要があります。
 

 抗凝固療法
 
 ワーファリンやアスピリンの投与が今、話題になっています。
 心房細動があると心臓の中で血流が悪くなるので血栓ができやすくなります。また、ワーファリンやアスピリンは血液を固まらせにくくする性質があるので、血栓の予防になります。
 長嶋氏の担当医を務めた東京女子医大脳神経センター内科教授の内山真一郎氏はこういっています。
 「わが国の心房細動患者に対する管理は、欧米諸国に比べると大きく遅れている」。
 内山氏らが、全国の一般内科や循環器内科、神経内科、脳神経外科など抗血栓療法を行う医師3843人に対してアンケート調査行いました。
 その結果、75歳以上の高齢者あるいはTIA(一過性脳虚血発作)、脳梗塞の既往、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、うっ血性心不全のいずれかのリスクを抱える心房細動の「高リスク群」では、抗凝固薬のワーファリンの投与例は59%に過ぎなかったそうです。
 
ワーファリン投与中は、PT−INRなどの定期的な血液検査が必要なので、ついついワーファリンの処方をためらってしまう医師がいるのかもしれません。
 心房細動のかたや一度でも心房細動になったことがあるかたは、めんどくさがらずに、ワーファリンやアスピリンを服用して、脳梗塞や脳塞栓をしっかり予防しましょう。